挨拶

■お悩み

椎名さん、こんにちは。久しぶりにこのコーナーが復活したと聞いて、早速お便りしました。くだらない相談で申し訳ないのですが、よろしくお願いします。

相談というのは他でもない、「挨拶」についてです。最近、私はほんの少しだけお話したコトのある顔見知りの方が増えたのですが、そんな方達に偶然遭遇した時にどんなご挨拶をしたらよいのかとても悩んでしまいます。どうして悩むのか、というと、このような場合、「相手が私を全く覚えていない、もしくは、相手のステータスが明らかに自分より高く、覚えてないフりをされる」可能性が高いから、なのです。例えば、どこぞの会場でその方と目が合ってしまった場合に、私が「こんにちは、先日お話しさせて頂いた○○です」と、ご挨拶しても、「誰?」っていう表情で見られて終わり、という展開が予想され、怖ろしくて声が出なくなってしまうんです。相手が全く覚えていない場合はいいんですが、覚えている場合はキチンとご挨拶しないと失礼じゃないですか。しかし、先日、こういうシチュエーションで思い切って満面笑顔のご挨拶をしたトコロ、2秒間私を見つめた後にゆっくりと顔の向きを変えて立ち去られてしまいました。私はその時、私のコトを「最高に有名な作家だ」という、誤った情報を信じきっている姪と一緒だったので、最近知恵がついてきたその姪に、「叔母はたいした作家ではないばかりか、挨拶しても無視されるダメな存在」という負のイメージを植え付けてしまいました。このままでは私は、誰かに会うのが怖ろしくてどこへも出かける事ができません。姪の私に対する誤ったリスペクト心をもう少し、せめて小学生の間だけでも持続させたいという思いもあります。挨拶の怖ろしさから解放され、かつ、姪の私に対する尊敬心を復活させるにはどうしたらよいでしょうか?

神奈川県 某爆睡系劇団座付き作家 女性

■お答え

解ります。挨拶というのは本当に怖ろしいモノですよね。満面の笑顔を放った相手に無視される、というのは、正に地獄の苦しみでしょう。それを見ていたギャラリーに、「アレ?本当はアノ人、私の事知ってるハズなんだけどな、ナハハ…」などとお茶目に言い訳しなきゃなりませんしね。お気持ち、お察しします。

まず、そんな顔見知りに会いそうな場所では、アナタには双子の妹がいるんだと思い込むのです。その人と会ったのは妹で、顔ソックリだけど私はその双子の姉だから関係ない、と、思い込んで下さい。ちょっと知ってる人に挨拶しなかった罪悪感からはこれで解放されると思います。堂々と知らないフりをする事で、相手も案外「他人のそら似かな?」などと思ってくれるでしょう。もし、万が一、アナタが知らないフりをしたにもかかわらず、向こうから声をかけられた場合は、2秒間待ってから感じ良く、「……申し訳ありません。多分それは妹の○○だと思います。私達、一卵性の双子なんです」と、お返事して下さい。この方法は相手の方をキズつけないばかりか、「え?双子?」という衝撃で、相手により強い印象を残す事が出来ます。そんな衝撃の後では絶対にアナタを意識するにハズなので、次回お会いした時は堂々とアナタからご挨拶しましょう。その際、「いやぁ、君、双子なんだってね。今日は本人かい?」などと双子の話題で盛り上がる事ウケアイです。

しかし、実際、双子というのは真っ赤な嘘なワケですから、「顔見知り」から「友人」にカテゴリが変化した場合は即、真実を告げましょう。「友人」になった後なら笑って流してくれるでしょう。

アナタの様な性格の方が様々な場所で顔見知りに会うのは辛いでしょうが、頑張って下さい。ちなみに私を双子だと思っている方は、現在5人ほど存在します。

また、アナタを素晴らしい人間だと誤解されておられる姪っ子さんについてですが、一度消えた尊敬心を取り戻すのは、大変困難だと思います。かといって、一度に全部を明かすのはショックが大きいと思うので、少しずつ彼女の思い込みを小さくしていきましょう。「叔母さんはすごい作家」→「叔母さんは横浜近辺ではすごい作家」→「叔母さんは親しい友人の中ではすごい作家」→「叔母さんは自分の心の中ではすごい作家だと思っているらしい」というような流れで自然に解らせてあげるのがベスト。多少ガッカリするでしょうが、大人というのは時々あり得ないミエをはるモンだ、という事をリアルに学ぶよい機会となるのではないでしょうか。

小学生にリスペクトされたければもっと別のアプローチをすべきでしょう。例えば、カマキリの卵をプレゼントして小カマキリがゾロゾロ出て来る様を見せる、とか、シナモンのシールを全種類持っている、だとかです。きっと「叔母さんはスゴイ!」と、尊敬されるでコトでしょう。

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