沈黙した彼女

中学2年の夏、少し無理をしてその地域で評判の進学塾に入りました。最近の塾がどうなのかは分かりませんが、私の入った塾は、まず試験を受けてパスしないと入れない、という塾でした。数学が弱かった私はその塾へ入るために2ヶ月間準備して試験に挑んだのでした。結果、英語、国語はまあまあだったものの、やはり数学は微妙でしたがなんとか入ることができました。ナゼそこまでしてその塾に入る必要があったのか?

それは、当時どうしても一緒の高校へ行きたくない友人がいたからです。その大嫌いな子と同じ高校へ行かないためには、自分のランクを無理して上げる必要があったのでした。そんな動機で入ったものの、ついていくのは大変でした。みんなの倍勉強してやっと同じ列に並べる、といった感じ。ですが必死でがんばっていたのです。ある夏の日の授業中、先生に当てられて即答できなかった時、私の胸に乾電池が投げられました。しかも単一。ちょっとした大きさの石がぶつかったみたいな衝撃があって、暫く茫然としている私に先生は、「バカは死なねぇから大丈夫だよ」と言ったのです。たまたま先生が苛々していただけの事かもしれませんが、この出来事がショックで私はその塾へ通えなくなってしまいました。

そのまま自然消滅的にフェードアウトして辞めたかったのですが、「自分の口できちんと理由を言いに来なさい」と、先生から何度も電話があって、仕方なくまだ生徒が来る前の時間に塾へ行ったのでした。どういう理由をつけたかもう忘れてしまいましたが、家で何度も練習した通りに辞める理由を言いました。先生は黙って聞いていて、私が話し終えるとこう言いました。「君みたいにここを辞めていった生徒に1年後道で会ってさ。その子がささっと電柱の陰に隠れたんだよ。どうしてだと思う?その子、ウチにいた時は○○高校も狙えるくらいの子だったのに、なんと制服見たら○○高校のじゃない。恥ずかしかったんだな、きっと。僕にそんな格下の高校入ったって思われるのがさ」と。そしてニヤッと黄色い歯をむき出して笑い、「1年後、道で会っても電柱に隠れたりしないでね」と、言ったのでした。先生のこの最後に見せた笑顔が頭の中に張り付いて離れず、「塾なんかに通わなくても希望校に絶対入ってやる!」と、ナゼか突然ファイトが沸いてきたのでした。

そして、高校受験発表の日。ラッキーにも希望校に合格した私は、駅から家族に電話した後も、なんとなくその場でダラダラ友人と話していたのでした。すると、後ろから声をかけられ、振り向くとそこにはあの塾で一緒だった女の子がニコニコ顔で立っていました。「久しぶりだねー!どこ受けたの?○○工業?」と、同じ駅を使う工業高校の名前をあげた彼女に「ううん、○○高校だよ!○○ちゃんは?」と聞くと、ナゼか彼女の顔から笑顔が消え、沈黙してしまったのです。そしてそのままいってしまったので「何?」と、気にかかりました。後で分かったコトですが、彼女も私と同じ高校だったのです。私と違い、3年間あの塾に通った彼女なので、言いずらかったのでしょう。彼女には申し訳ないのですが、その事実を知った時、私はあの先生に勝った、と思ったのでした。嬉しかった。

長々と何を書いてるんだ、と言われそうですが、私には蛇みたいにしつこく、受けた屈辱を絶対に忘れない、といった面があります。短気、というか、気がちっちゃいクセに執念深いというか。あんまりイイ性格じゃないですね…。自覚してます。

ですが、悔しさは実力で返したいという思いが常にあります。最近、自分の周りに起こったある卑劣なやり口を、私は絶対に忘れるコトはないでしょう。そして、無理をしてでも実力で倍返ししてやろう、と心に決めました。

その決意表明として、この想いをここに記録しておこうと思います。

正直、かなり凹んでますが、速攻で立ち直ります。そして、ガタガタ言わずに自分のやるべきことに集中したいと思います。

悪意っていうんですか?そーいうの、久々に実感しました。人の気持ちって、案外分かりにくいモノですね。こういう顔でこんなコト言ってた人が?って、そんな失望。

……がんばります。

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